幸福な序盤 退屈な中盤 あるいは俺は何回タクティクスオウガ運命の輪の序盤を繰り返すのか
これって何?
このテキストはタクティクスオウガ(クエスト->スクエニ)のニューゲームを始めては中盤に飽きて止めている筆者が、
自分は悪くない、このゲーム自体に原因があると自分に思い込ませるように書いた一大感想文である。
まず説明
タクティクスオウガ(以下TO)は名作と呼ばれる。
ジャンルとしてはシミュレーションRPGで、特徴は
- HERMITという名前がついた斜め見下ろし(クォータービュー)型の画面構成
- WT(Wait Turn)という値が0になったキャラから行動する、敵味方入り乱れてのバトル
- 味のあるドット絵
- ヴァレリア諸島の戦乱を描いた、ハードで濃ゆいシナリオ
あたりだろう。
オリジナルはクエストからSFCで発売され、自分が最初に触れたのはPS1への移植版だった。
その後、スクエニへと版権が移り、15年の時を経てPSPでリメイクされた(「タクティクスオウガ 運命の輪」)。
自分はそれをVitaで持っていて、時々新たにニューゲームを始めては中盤に飽きて止めている。
章分けでいうと3章後半から4章前半くらいのところで止めている。
なぜ始めるのか
タクティクスオウガの世界が、途方もなく魅力的だからである。
冒頭に描かれるのはヴァイス(主人公デニムの影にして狂言回し)がデニムのもとに、
雨の中馬を走らせ知らせを届けに来るシーンだ。
スタッフロールが流れる中ヴァイスは駆け、スタッフロールが終わると同時にデニムのところに着く。
この手の演出はシナリオの松野氏が得意とするところで、FFTやFF12の冒頭も似たような雰囲気がある。
ヴァイスがもたらした知らせは、敵であるランスロット・タルタロスが街に来るというもの。
デニム・ヴァイス・カチュア(鬼姉)は暗殺を企てるが、情報は間違いで、ランスロット・タルタロスだと思った相手は同名の騎士ランスロット・ハミルトンであった…。
という情報の詰まった濃いオープニングを叩き込んでくる。
しかも決して理解しづらいものではないのだ。
その後ハミルトンのほうのランスロットの助力を得て、デニムは英雄へと成り上がる。
そして1章の最後には、シナリオ的にもゲーム的にも重大な選択をすることになる。
筆者はこの1章を愛している。
「重大な選択」に至るまでの流れも自然だ(これはシナリオ的な技巧)し、
レベルデザインもとても良い。
英雄になったきっかけの「アルモリカ城」攻めは、ランスロット一味がゲスト参戦してくれるので何もしなくても勝てる(ここでバトルの流れが分かる)。
引き続く「タインマウスの丘」ではまともに操作することを覚える。相手は弱く助っ人もいる。
「クリザローの町」ではゲストを救出せねばならない。しかしまだ相手は弱い。
バトルが終わると救出したゲストたちが仲間になり、自由度が上がる。ここまでが初心者対応だろう。
その後は数ステージ、緩やかに難易度が上がっていく。ゲスト救出マップの「古都ライム」がちょっと難しいが、このゲストは見捨てても良い(ルート限定で後で仲間になる)。
そして1章最後の「バルマムッサの町」が傑作なのだ。
この町は高低差があり、最初デニムたちは高所を締めている。
屋根などの高い場所から弓を撃ち続ければ一方的に勝ててしまう。
章の締めくくりとは思えないほどやわい手応え。
そして「重大な選択」があり、ヴァイスが敵に回ると一変する。
デニムたちが低い位置、敵軍が高い位置に変わるのだ。
しかもルートによってはゲスト救出マップなのだが、このゲストが敵対している。
厄介である。ゲストなので生かしたいがガンガンこっちに魔法を撃ってくる。
高低差とゲストの存在で簡単なマップが一気に難所になる。
制作側はしてやったりと言ったところだろう。
この1章が傑作すぎて何度も繰り返してしまうのだが、中盤、あるいは終盤の初めに飽きてしまう。
なぜ飽きるのか
人は作業感が出てくるときに飽きる。
ステージ攻略自体は面白いままなのだ。
城、平原、湿原、森、雪原など、バリエーション豊かなマップは目にも嬉しいし、
ときおり挟まれるデニムと敵の一騎打ちもいいアクセントになっている。
問題はレベル上げである。
このゲームは(運命の輪版のみだが)クラスレベル制という変わったシステムを取っていて、
例えばナイトなら「ナイトのレベル」という値がある。
デニムがナイトになっても汎用キャラがナイトになっても何人ナイトになっても、この「ナイトのレベル」が適用される。
「ナイトのレベル」が20なら、店で雇ったばかりのキャラでもナイトに就かせればレベル20だ。
(脳内補完的には、ナイトを運用するノウハウが軍に溜まっているのだと考えている)
おそらくレベル上げを不要にするためのシステムだったのだろうが、ものすごい副作用がある。
ライバルのヴァイス(デニムと友情を結び直す)は「レンジャー」という固有クラスを持っているのだが、レンジャーの初期レベルは1である。
ランスロット一味だったギルダス、ミルディンのコンビは「ホワイトナイト」という固有クラスを持っているのだが、ホワイトナイトの初期レベルは1である。
つまり、ヴァイスとかミルディンが仲間になるたび、あるいは新職業が開放されるたびに「レベル1のクラス」が増え、ということはレベル上げの負担は返って増すのである。
ヴァイスを、レンジャーを諦めてナイトにすればレベル20になるので、ヴァイス自体が使えないわけではないが、
せっかくの固有職なのでそのまま活躍させてやりたいのが人情。
タインマウスの丘でランダムエンカウントのリザードマンを鈍器で殴るはめになる。
これがダルい。それが一つ。
続いてスキルのシステムにも問題がある。
戦うと溜まるスキルポイントを消費してスキルを買い、枠にセットして使うだけのシンプルなシステムだが、
ヴァイスなど途中加入のキャラの初期スキルポイントはゼロである。
「剣」「物理攻撃力アップ」などスキル自体は持っているが、剣ではなく槍にしたいなどの理由で新たにスキルを買うにはタインマウスの丘で(ry
これもダルい。
せめて新規入手したクラスは初期レベルが最初から高め、ということにしていれば…、
あとスキルポイントも初期に1000とか持ってることにしていれば…、
と考えてしまう。
ただ、初期レベルが高かったら高かったで「レベルアップボーナス」の問題もあるのだが、詳細はググって…。
レベル上げしなければ?
クラスチェンジは最小限にして、
スタメンを1章で出会った仲間で固めれば、
それほどレベル上げの必要はない。
一回はそれも試したのだが、クリアには至らなかった。
やはり人間には自由が必要だ。
サクサク進むのはいいけど、カスタマイズ性を捨ててしまってはあんまり面白くないのだ…。
まとめ
「タクティクスオウガ 運命の輪」は名作を下敷きにしてちょっとレシピにアレンジを効かせすぎた、
普通〜良作ぐらいの作品だ。
あと絵と音楽はまさに神。
あとは合成がまとめてできない点が不満だが、
PSアーカイブなどで買う価値はあると思う。
運命の輪を買ってみて4章突入くらいで飽きても、君のせいじゃない!
そして俺もそうだ!
ということが言いたい。