【レビュー】The Beatles / Please Please Me
レビューコーナー開始
突然だがレビューコーナーをスタートする。
ブログネタは多いほうが良いのだ。タクティクスオウガ日記も忘れてないよ!
初回はビートルズのデビュー盤で、気が向けばビートルズを発売順にレビューするしそれと同時進行で他の音楽とかゲームとか書籍もレビューするつもり。
1.I Saw Her Standing There
1.2.3.4! というカウントからスタートする。
このカウントから始まるのが、掛け声やノイズなどを音楽に取り入れていったビートルズを象徴しているなあと思う。
曲調は典型的ロックンロールだがややワルな雰囲気がある。
このあたりロカビリーからの影響もうかがえる。
それでいてサビ(コーラス)部は非常に爽やか&ポップなのがまたビートルズらしい。
2. Misery
1.に比べポップスよりで切ない曲。
特に冒頭はピアノで、今はともかく当時としてはアルバム内での落差が激しい。
ただテンポはやや遅めロックンロール(マージービートっていうのかな?)で、現代の曲だったらもうちょっと落としてミディアムテンポの曲として演奏していた気がする。
3.Anna (Go To Him)
カバー曲。当時はアルバムにカバーを入れるのは当たり前のことだったらしい。
そしてビートルズのカバーは概ねいい感じ。
自作に比べ曲のことを客観的に分析できているのかもしれない。
この曲の聞き所はジョンのボーカルとリンゴのドラムで、
ボーカルはこの曲調(ゆったりしたR&B)に合わせてソウルフルなものに。
ドラムはハイハットのペダルを踏むテクニックや、フィルインでハネるクセなどリンゴのプレイスタイルが色濃く出ている。
4.Chains
これもカバー曲。そしてジョージのボーカルの初お披露目。
ジョンとポールという作曲者としてもボーカルとしても個性を放っていた二人に比べ、作曲も歌も遅咲きのジョージだが、この曲のボーカルはなかなか。
曲調は軽快なR&Bといったところ。
5.Boys
ジョージに続いてリンゴが初ボーカルを務める曲。
リンゴ=癒し系のイメージはこの時点ではなく、なかなかハードな曲を割り当てられている。
この曲は分類すればドゥワップになるか、このアルバム、現時点ではロックンロールやロカビリーの流れもあるにはあるがブラックミュージックな曲調が多い。
6.Ask Me Why
スイートなポップス。
2.と同様、もっと遅いテンポが似合う気がするがロックンロールの影響か早めになっている。
しかしながらこのテンポでの甘いバラードもいいものだ。
7.Please Please Me
タイトル曲。
ロックンロール的なテンポやアレンジとポップス的な展開のあるコード進行という、初期ビートルズのイメージそのままの曲。
最初はテンポが遅かったけれどプロデューサーのジョージ・マーティンのアドバイスで早くした、という小ネタがある。
遅いバージョンならAnnaのアーサー・アレキサンダーやレイ・チャールズのような雰囲気だっただろうか。
早くしたのはある種エポックメイキングで、今後のビートルズはこの曲調を続けていく。
またジョージ・マーティンとの関係性もよくなったらしいのでその意味でもこの曲は重要。
そんな重要さとは関係なく、聞いていて気分の高揚するいい曲でもある。
8.Love Me Do
迷デビュー曲。
デビュー曲のわりに地味として知られる。
おそらく展開の少なさがブルースを予感させ、その割にポップなメロディがついているので「どっち付かずな地味さ」と捉えられたのだと思うが、
ビートルズ流のブルースをやったらこうなったとも解釈でき、自分としては結構好きな曲。
9.P.S. I Love You
ボーカルはジョンもポールもそれなりに活躍しているが、おそらくポール主導だと思われる曲。
曲調の甘さポップさもそうなのだが、ポール独特の歌詞のストレートじゃない感じ(この曲の場合、P.S.を使ってI Love Youをごまかしている)がそんな気がする。
ハモリが好きな向きには気に入ってもらえるかもしれない曲でもあるが、自分はハモリあんま好きじゃない。
10.Baby It's You
再びカバー曲でソウルフル路線。
ジョンのボーカルが素晴らしいのもAnnaと共通。
ジョージと思われる低音ギターとジョージ・マーティンと思われるピアノのユニゾンという、後につながる音作りの工夫も見られる。
たぶんミックス段階でリバーブ成分が入ったり消えたりするのでなんか聞きづらい。そこが残念。
基本的にはAnnaより好きなのだが…。
11.Do You Want To Know A Secret?
ジョージ曲。この時点ではジョージは曲作りをしておらず、レノン=マッカートニーから提供された曲を歌っている。
カバー曲が良い理由に客観的になれたからだと書いたが、それはジョージ曲にも言え、なかなかアレンジが凝っている。
渋いバラードと見せかけて軽快なポップスになるオープニングが好例。
12.A Taste Of Honey
カバー。渋いバラード。
ポールのボーカルはいいのだが、ちょっと渋すぎ…。
なにげに3連符系の曲はこの曲のみかも(ハネている曲は多いのだが)。
サビ(コーラス)では多重録音もされてより分厚くなっている。
13.There's A Place
Please Please Meと同様、ポップな曲をロックな曲調でやった感じであり、
またアルバム終盤恒例のジョンのシリアスな面が出た曲である。
しかしAメロ(ヴァース)があまりに単純すぎてその単純さが古さにつながっている気がする。
アレサとかJBとかそういう歌手ならこういうヴァースでいいのだが、ビートルズ風の甘いハモリではなんか合ってない感がある。
14.Twist And Shout
カバー曲。最初からジョンの煽るようなボーカルが全開で非常に楽しい。
ジョンが暴れまくる後ろでポールとジョージはきれいなコーラスをしており、そのギャップもまたいい。
リンゴはリンゴでこのアルバムベストとも言えるドラミングをしている。
ブリッジ部の盛り上げ方といい、ときどき入るフィルインといい最高。
総評
ビートルズのデビュー盤であり、今だったらスタジオライブとでも呼ばれていそうなほぼ一発録音のアルバム。
一発録音なのはビートルズのライブの勢いをパッケージングしたかったからだと聞いており、後にコンセプト・アルバムで人気になるビートルズだが(まあこの時点で人気なのだが)、
ある意味デビュー盤からコンセプト・アルバムといえるほど目標が明確な作り方をしている。
一発録音の恩恵として、演奏(特にボーカル)が素の状態で録れている。
特にジョンは加工ボーカルが好きなので、素のボーカルは少ない。
素のジョンのうまさを堪能するにはこのアルバムのAnna, Baby It's Youがいいだろう。
曲作りにおいてはまだ夜明け前といった感じで、
ビートルズ独自のポップなメロディ&コードをうまくアレンジとして落とし込めてない感が数曲で見受けられる。
Please Please Meの成功がこの問題の解決に勢いを与えてくれるはずなので、次のアルバムでは期待しよう。