シンセサイザーでシンセキックをシンセサイズ

前置き

最近シンセサイザーの音作りにハマっていて、お金が溜まったら実機も買いたいな〜と思っていたりする。

そのシンセでキック(バスドラム)の音を作ることを最近覚えたので記事にしてみる。

環境

DAW(制作環境)はMac版Studio One 3。

使用したシンセ音源はDaichiさんが制作したSynth1を使わせていただいた。

Synth1にした理由としては、フリーソフトウェアであり、基本的なパラメーターが揃っているので説明しやすいと思ったため。

では行ってみよう。

準備

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Synth1を立ち上げる。

シンセサイザーはいろいろな使い方ができるだけにUIが重要になってくるが、Synth1のこの画面は必要なものが揃っている上にわかりやすい。

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Synth1のトラックに4つ打ちのMIDI情報を打ち込み、ループ再生しておく。

以後はループしている4つ打ちを聴きながら音を確かめつつ音作りする。

各種設定のキャンセル(兼、設定の説明)

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最初はfuwaaというふわーっとしたプリセット(音の設定)がロードされているが、ここをクリックしてinitial sound(初期設定)に変更する。

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これが初期設定だが、まだちょっとふわーっとしている。ディレイ/コーラスもかかっている。自分はもうちょっとシンプルな音(オルガンみたいな)で音作りすることにしているので、これから設定を変えていく。

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LFOセクション。LFOはパラメーターを揺らすことができ、例えば音量(amp)を揺らすとほわほわしたトレモロの音になる。

1,2と書かれたLEDっぽいボタンを押すとLFOを解除できるので、しておく。

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ディレイとコーラスも同じ要領で切っておく。

ところでディレイはやまびことかエコーの効果で、コーラス/フランジャーは音色をきらきらとかしゅわしゅわさせるものだが、どちらも原理は同じで音を少し遅れて発音させるものだ。

原音に遅れてかぶさってくるのでエコーに聞こえるのがディレイで、原音に近いので音が重なって音色が変わるのがコーラス/フランジャー

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Voiceセクションでは同時発音数を決めることができる。

キックを同時に鳴らすことはないので、mono(同時発音数1)にしておく。

まあ同時に鳴らさないから1でも16でもそう変わらないのだが、一応。

ではいよいよ音作りに入る。

音作り

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自分はまずオシレーター(OSC)を選ぶところから始める。

オシレーターは基本的な波形を選ぶことができる。

Synth1の場合、サイン波(丸いやつ、時報の音)、三角波(三角のやつ、時報にちょっとクセがついた感じ)、ノコギリ波(三角を寄せたやつ)、矩形波(四角いやつ)の4つを選べる(これはOSC1の場合で、OSC2にはサイン波がなくてノイズが入っている)。

ここでは三角波を選ぶ。理由は単純で、三角波が好きだから。

今気がついたのだが、このサイン波、三角波、ノコギリ波、矩形波の並びはクセが強い順(倍音が多い順)なのかもしれない。

倍音が多いほどきらびやかだったり高音成分が多かったりする。三角波はやや少ない倍音を持ち、これで低音を鳴らすと高音成分はあまり含まれない。

しかし今作ろうとしているのはキックの音なので、高音成分はなくてもいいのだ。

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MixのセクションではOS1とOSC2を混ぜる割合を決めることができる。

さっきの三角波はOSC1だったが、もう一つOSCが用意されていて、混ぜることで複雑な音色を作ることができるのだ。

が、ここでは混ぜない。キックの音にそんな複雑さは必要ないのだ。

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OSC1、OSC2と言ってきたが実はもう一つOSCがあって、これはsubという名前の通り低い音程の音を混ぜることができる。

キックには低音の迫力があるといいので、-1oct(オクターブ下)の三角波をほんのわずか混ぜることにする。

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key shiftのセクションではキーボードというかMIDIの入力した音程から、発音する音程をズラすことができる。

例えば-1にしておいて、「中央のド(C3)」を入力すると「シ(B2)」が出力される。そういうことはあまりしないが。

上の例でわかるように、単位は半音だ。

ここではマイナス24という大きな数字を選ぶ。

中央のドを入力するとその2オクターブ下のドが出力されるのだ(サブオシレーターに至っては3オクターブ下)。

えんべ

エンベロープ

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個人的にはオシレーターより重要な設定である、Ampセクション。

音量のエンベロープを設定できる。

エンベロープとは聞き慣れない言葉だが、意味は自分も知らない。

だが、エンベロープを変えることによって音の時間的な変化を変えることができる。

例えば

  • キーを押した瞬間は強力だが、時間とともに減衰する音(打楽器向き)
  • キーを押した瞬間は無音だが、時間とともにフェードインするように大きくなる音(ストリングス向き)

と言った違いを生むことができる。

上のスクリーンショットに写っているのは見切れているがA,アタックのAのノブだ。

Aはアタックの早さを決めることができ、0にするとキーを押した瞬間にいきなり最大音量が出る。

ノブをひねれば、「最大音量になるまでの時間」が長くなり、フェードイン効果を生む。

打楽器やピアノ、ギターあたりは打面や弦を叩き、その後は何もしないからいきなり最大音量パターンだ。

そしてキックは打楽器なので、Aは0もしくはかなり小さい値でいい。

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Aは最大音量に達するまでの時間だったが、このD(ディケイ)は最大音量に達したあとのことを決めることができる。

ギターで、パームミュート(掌を弦に当てながらのピッキング)した場合としていない場合を比べてみると、

  • ミュートした場合はアタックのあと、音量は急速に減衰して音が消える。コポコポした音になる。
  • ミュートしていない場合は音量はゆっくりと減衰していく。素直なポーンという音になる。

この違いを表したのがまさにディケイだ。

キックの音については、単純な大太鼓と違ってドラムセットのバスドラムは余韻が明らかに短い。

よって、ディケイは「早め」の設定にする。

ノブをいじりながらちょうどいい塩梅を見つけよう。

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続いてS(サスティン)。これはキーが押されている間の基本音量を決める。

と言っても難しいが、さっきのミュートしたギターとしていないギターでいくと、

  • ミュートしたギターはディケイのあと、音量はほぼゼロになる(音が消える)
  • ミュートしていないギターは弦を押さえている間はある程度の音量がある。

つまりサスティンは、ピッキングしてその後減衰はしたが、まだ弦を押さえている間の音量を決められるのだ。

キックの場合は明らかにミュートしたギターに近い(布団などをバスドラムの中に入れてミュートしたりもする)。

よって、Sはゼロにしておく。

もう一個あるのがR(リリース)で、これはさっきの例でいくと弦から手を離したあとの余韻を決められる。

キーから手を話したあとの余韻と言ってもいい。

Rが大きいほど、余韻の時間が長くなり、ゆっくり減衰する。

が、サスティンゼロならこのパラメータあまり意味ない。

これもゼロにしておく。

フィルター

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フィルターの原理は難しそうだが、語感でなんとなくわかるように音をフィルターにかけることができる。

タイプが5つ用意されていて、その内3つはLP(ローパス)系、そして残りがHP(ハイパス)、BP(バンドパス)だ。

まずローパスから行くと、これは低音成分を残して高音成分をカットするフィルター効果になる。

音をこもったり湿気たりした感じにできる。

12と24はどれくらい急なカットをするかになる。

12は1オクターブにつき12DB(デシベル)、24は1オクターブにつき24デシベルカットするんだったかな。

24のほうが急なカットができると覚えておけばいい。

なお、LPDLというのは使ったことがないのでわからない。

ハイパスはローパスの逆で、低音をカットして高音をそのままパスする。

バンドパスは指定した帯域を残して高音も低音もカットする。

キックに向いているのは明らかにローパスなので、ここはLP24を選ぶ。

シンセの原理のせいなのか、他の音を作るときもローパスが多い。

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フィルターセクションのfrq(フリーケンシー)では、ローパス、ハイパス、バンドパスの基準となる周波数を決めることができる。

例えばLP24モードで、周波数frqが1000だったとしたら、1000を基準に、周波数2000のところは24DBカット、周波数4000のところは48DBカット、というふうにカットしていく。

なのでかなり重要なパラメータになる。

キックの場合、かなり低い位置を基準にカットしたほうがうまくいくと思う。

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フィルターにもADSRがある。

正直こちらのADSRはあまり理解できていないのだが、まあ基本は同じと考えていい。

Aはフィルターがかかるまでの時間、Dはフィルターがかかってからの減衰。

問題なのは、ハイパスとローパスで逆の動きをすることだ。

例えばローパス時は、発音の瞬間はフィルターがかかっておらず、それからAパラメータに従ってだんだん高音がカットされ、その後Dパラメータに従ってだんだん高音が戻っていく。

ただしそれは、

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このamtが中央から上にあったときだ。

amtはなんの略か知らないがおそらくデフォルトのフィルター状態をしめす。

つまり時系列順に言うと、

  1. amtに従った位置にフィルターのfrqがある(frq:5000)
  2. Aに従ってフィルターがかかっていく(frq:5000〜1000)
  3. Dに従ってフィルターが戻っていく(frq:1000〜5000)

という動作をしているものと思われる。

このフィルターセクションのかかり具合は予想が難しいので、4つ打ちをループしつつ耳で合わせる感じが良いと思う。

またオノマトペのちからも借りよう。

さきほどの5000〜1000〜5000というfrqの動きなら、フィルターは高音をだんだんカットしていき、また高音に戻る。なので「ワウワ〜」みたいな感じになる。

キックはというと、喋ってみよう。

「ドン」だろうか?

間違いではないが、もっと正確には「ドゥーム」ではないだろうか。

「ドゥーム」の「ド」はアタックなのでおいておいて、「ゥーム」はなんとなく、「ワウワ~」の「ワウ」部分に近い。

つまりキックの音は、フィルターを上から下にかけてそのまま戻らない感じなのだ!

なのでAを0付近に、Dを短めだが変化は分かる程度にする。SとRはあまりいじらなかった。

仕上げ

ここまででだいぶキックっぽくなったので、もう一度エフェクトを検討する。

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キックは余韻が少ないとは言え、ゼロではない。その感じを表すためにわずかに短めのディレイをかけた。

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忘れないように保存しておこう。保存すれば他のプリセットと同様に呼び出すことができる。

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他の楽器もsynth1で作ってみた。

soundcloud.com

出来上がった音源がこれ。