Apple Musicと音楽パッケージの価格の話

前置き

月額制音楽ストリーミングサービスのApple Musicが始まって4日ほど経った。まだ無料期間中ということもあり、試している人も多いだろう。自分も試している。とりあえず初日に書いた記事がこれ↓

mi-ki-ri.hatenablog.jp

そのApple Musicについて面白げな記事がニュースアプリに上がっていたので、それについて検証してみる。

記事はゆきぼうさんの月額料金払うほど、みんなアプリとか曲とか買ってんの?って話。 - Yukibou's Hideout on Hatena。タイトルどおり、Apple Musicのコスパというか月額980円(年12000円弱)を払うほどみんな曲を買っているかという問題提起だ。以下結論部より引用。

というわけで、こういう月額料金でどうこうするサービスって、自分が本当に一ヶ月にsそれだけのコンテンツを買うのかどうか、使うのかどうかをよく考えてから入会しないと、ただお金を無駄に払い続けるだけというか、費用対効果が悪い結果を産んでしまうと思う。

非常にもっともな話で、例えばミスチルしか聞かない人がApple Musicに入るのは効率が悪い。ミスチルがアルバムを3年に1度出すとして、1枚3000円だとすれば、「ミスチルしか聞かない人」が年あたりに支出する金額は1000円(プラスシングルを買う場合、シングル代)。Apple Musicは12000円なんだから大赤字だ。

ミスチルしか聞かない、というのは極端な例ではあるが、しかし意外と好きなアーティストしか聞かないって人は多いし、そういう人にはApple Musicは向かないといえる。

AppleもLINEもあきらかにその辺を認識していて、「プレイリスト」機能を充実させようと頑張っている。プレイリストなどで新たな楽曲を聞く機会を増やすことで、年12000円の支出の納得感を高めようとしているようだ)

比較

さて、上記ゆきぼうさんの記事を読んでまず考えたのが、じゃあどの程度音楽を聞く人がApple Musicに向いているのだろう、という点だ。幸い音楽は価格が割合固定化されているので、比較は簡単。なので比較検討してみようというのがこの記事の趣旨である。

この記事ではApple Musicの年間にかかる金額つまり12000円を1AMと呼ぶ。1AMでどれだけのことができるのかを考え、その上でApple Musicに乗り換えるべきか検討する。

J-POPのCDを新品で買う人

J-POPのCDはDVDつきや2枚組みなどで無い限り、たいてい3000円プラス税である。つまり1AM = 4J-POPCDの等式がだいたい成り立つ。年間にJ-POPのCDを新品で買う人ならば、その枚数が4枚より大きいならApple Musicのほうがお得である。そう、配信されるならね。

新品と断ったことでわかるように、中古だともっと安い。しかし人気のあるCDは劇的に安くはならない気がする。

実感では、J-POPの若手アーティストは年間にアルバムを1枚出す人が多い。ベテランになるにつれ、契約が変わるためか他の理由かペースが落ちる。その場合、ライブアルバムなどでお茶を濁したりもする。しかしライブアルバムは見送るようなライトな層も多そう。

このように考慮する問題はいろいろあるものの、単純化のためにアーティストは年間に1枚アルバムを出し、ファンはそれを必ず買う。中古店は使わないとしよう。すると1AM = 4J-POPCD = 4好きなアーティストという公式になる。つまり、好きなアーティストが5人パッと思い浮かぶ人は、Apple Musicのほうがお得である。

これはけっこうAppleにとっては厳しい値かもしれない。自分は音楽が趣味なのでJ-POPで5人くらいすぐ挙がるが、「音楽はそこそこ聞く」ぐらいな人だったら5人もCD即買うレベルのアーティストを持っていないような気がする。

洋楽のCDを新品で買う人

前々から気にはなっていたのだが、J-POPより洋楽のほうが明らかに安い。ただし洋楽でも日本版がある場合があり、日本版の価格はJ-POPとそう変わらなかったりする。なんかどこかが不健全な気がする。

ともかく、洋楽は安い。自分は「Forever Young」シリーズ(ようするに評価が定まったベテランの名作)とかをよく買うのだが、こういうのは1500円だったり1000円だったりする。現役アーティストの新作だったら2000円くらいか。

計算が楽なので1500円としよう。すると1AM = 8洋楽CDという式になる。年間8枚洋楽アルバムを買うならApple Musicが良い。

洋楽は往々にして、J-POPよりアルバムリリースのインターバルが長い。仮にJ-POPの2倍として、インターバルが2倍になれば1年辺りの量は半分になるから、1AM = 8J-POPCD = 16好きなアーティストということになる。

J-POPの場合、5人も好きなアーティストいねえよ層がけっこういそうだったが、洋楽の場合は17人じゃ足りねえよ層がけっこういそうだと思う。結局コスパは個々人のライフスタイルによる(あれ、この記事意味あるんだろうか……)

レンタルを使う人

CDは借りることもできる。TSUTAYAなどでレンタルすると、自分はたいてい5枚で1000円というコースを選ぶ。5枚で1000円なんだから12000円になるには60枚必要だ。1AM = 60アルバムレンタル

正直、この記事を書こうとするまでCDレンタルと定額ストリーミングを比べようとは思っていなかったが、年間に61枚も借りなければApple Musicのほうが得にならないというのは意外だった。61枚なら相当な範囲のユーザーを満足させられそうである。

レンタルの欠点は「所有はできない」ということだが、それ言ったらApple Musicだってそう変わらないし、欲しいアーティストが決まっているのなら「その都度レンタル」方式がお得かもしれない。

ハイレゾやらレコードやら

詳しくないが、コンテンツそのものより環境を整えるのにお金がかかりそうなので、一概には比べられない感がある。ちなみに、Apple Musicは音質を任意には選択できないようである。

つまりどうなのか

1AM、つまりApple Musicの年間にかかる購読料12000円はけっこう使いでがある。今Apple Musicを使っている、それなりに広い範囲のユーザーは、実はApple Musicでないほうがお得なライフスタイルをしているかもしれない。

しかしながら、ライフスタイルは不変のものではない。AppleにせよLINEにせよ、音楽を聞くスタイルの変更を野心の一つとして持っている。「欲しいアーティストが決まっているのなら「その都度レンタル」方式がお得」と書いた。しかしプレイリスト機能やラジオ機能、「For You」など、「欲しいアーティストを発掘する」という側面もストリーミングの要素である。その「発掘」スタイルがどれほど自分に合うものか、まずはお試ししてみるのがいいんじゃないかな、と思う。

お前はどうなのか

自分は先にも書いたように「Forever Young」シリーズなど古い洋楽を主に聞いており、まだまだ欲しいアーティストがたくさんいるので、おそらくApple Musicの購読料を十分にペイできると思われる。所有することにあまり興味もないので、Apple Music(まあダウンロード機能もあるけど確か契約を切ったら聞けなくなる)には合ってそうな気がする。もうちょっと使います。